人間の体内における約70%もの成分は水分であり、そのすべては約一か月で入れ替わると言われています。このように、人間の生活に欠かすことのできない「水」に対する考え方は、現代人のライフスタイルの変化や健康意識の高まりによって、大きく変わりつつあります。首都圏在住の約9割は飲料水を購入するとの統計があり、とくに、若い女性の場合飲料水を購入する方がほとんどであるといいます。実際に、「飲料水」市場は拡大を続け、国内の市場規模は3500億円(2009年)にまで成長しています。
「飲料水」を取り巻く環境の変化のなかにあり、これまでの単にのどの渇きを潤おすということのみならず、健やかな生活や健康維持のために、「飲料水」を購入して飲む消費者が増えています。このような意識の変化には、体内に取り込むものに対する「安心感」や「安全性」の追求が根底にあるようです。
今回のインタビューは、消費生活型先端産業ともいえる、急成長中の「飲料水」宅配業に着目し、2012年に中間市に立地した宅配水業界のリーディングカンパニーであるアクアクララ株式会社様にインタビューさせていただきました。
当社は2005年に操業を開始し、ミネラルウオーターの製造・販売から宅配に至るまでを一貫して行っており、自社のプラントで製造したミネラルウオーターを約12リットルのボトル容器に詰めてご家庭やオフィスに宅配しています。
また、ウォーターサーバーは販売ではなくレンタルという形式とし、機器の不具合や定期的なメンテナンス等のアフターフォローの充実にも心がけています。ここでも、お客様に対して、「安心」と「安全」を継続してお届けできていると考えています。
水をろ過する過程で用いる独自の技術「逆浸透膜(RO膜)」というフィルターは、雑味や不純物等の除去をはじめ、放射性ヨウ素(I-131)といった放射性物質も除去できる唯一の方法であります。
また、宅配されたボトルは未開封の状態であれば、180日もの期間で保存可能であるため、災害時の備蓄用飲料水にもなるということは、各ご家庭に飲料水を提供する上で、大きな強みとなっています。
当社は水の宅配事業をフランチャイズ展開し、全国各地の加盟店・代理店を含め国内に66ヶ所の水製造プラントを保有しています。また、フランチャイズ企業と協力することで、地元で採水した「飲料水」を地元で消費するという「飲料水」の地産地消を目指すとともに、お客様への迅速な宅配を実現しています。
ウォーターサーバーというと、病院や公的機関に設置してあるというイメージを持たれる方が多いと思いますが、当社の宅配水事業はウォーターサーバーを「それぞれのご家庭で楽しんでいただく」というコンセプトでスタートした事業です。全国で46万世帯ものお客様にサービスを提供していますが、そのうちの約8割が一般家庭向けに宅配しているものです。
当社はフランチャイズ事業者を含め、既に全国に66もの水製造プラントを持っていますが、2012年10月、中間市に新たなプラントを立地したことには、三つの理由があります。
まず一つめは、2011年に起きた東日本大震災という災害を目の当たりにし、どこで起きてもおかしくない災害への備えは、国内どこにおいても必要だと考えたこと。二つめは、九州における大消費地の一つである北九州地域の皆さまのニーズに対し、「飲料水」を安定して供給できるプラントを設置するため。三つめには、自治体職員の皆さんの熱意と万全な支援体制があったことも欠かせません。
先にもお話しましたとおり、当社は九州において鹿児島県以外の5県にフランチャイズパートナーの工場をすでに保有していたのですが、北九州地域の皆さまには遠方の工場から宅配を行っていました。配送の距離が長くコストもかさむため、北九州市内に近く、高速道路のICにも近い場所、さらには、土地代や水道代等を安く抑えることができる中間市に注目し、最終的に立地を決めました。これにより、北九州地域の皆さまへ当社の「飲料水」をお届けする環境が整ったわけです。
立地した中間市の職員の皆さまには立地場所の選定から、給排水管の整備、水質に関する相談に至るまで、様々な事柄について丁寧にご対応いただきました。
それだけではなく、工場の操業開始以降も、地元小学生の社会科見学の受け入れをご提案いただいたり、地元のイベントにはお声を掛けてくださったりと地域との繋がりを持つ機会をいつも与えていただいております。市のご担当者様からは「立地が決まって操業を開始したから終わりではなく、末永く事業活動を行っていただくためには何ができるのかを今後も考えていきたい。」というお言葉をいただいた時には、その「おもてなし」の心に感動をおぼえました。今後も、地域住民の皆さまをはじめ、中間市様とのご縁を大切にし、「アクアクララが立地してくれて良かった」と思っていただけるよう、地域密着型の工場として活動できたらと考えております。
私は常々従業員に対しては口を酸っぱくして言っていることがあります。「単に水の宅配だけに終わらせないこと。ただ飲料水を配送するだけでなく、お客様に寄り添いながら、「健康・安全・安心」を提供する生活のパートナーになるように」ということです。当社としては、単なる宅配水の企業ではなく、"水"を起点に健康・安全・安心を提供できる「生活産業」でありたいと考えています。
中間市産業振興課 商工企業誘致係 係長 熊谷 憲一郎
私は、「立地が決まったら、企業誘致が終わった」ということにはしたくありません。私たちが生活する、この地をせっかく選んで頂いたのだから、市に住む方々にも、「こんなにいい企業さんが立地したんだよ」、と知っていただきたいと思っています。こういった考えもあり、アクアクララ(株)様に市の小学校の社会科見学を提案させて頂きました。小学生にとっては、生命に欠かせない「水」を学ぶ機会に、アクアクララ(株)様にとっては、地元の方々に知っていただく、いいきっかけになったのではないかと思っています。
さらに、それ以外にも市立病院や市立保健センターには無償でウォーターサーバーを設置していただいたり、平成25年12月には、アクアクララ(株)の赤津社長のご提案により、平時においての流通商品を、災害時には優先的に提供いただけるという、災害協定も締結しました。このように、アクアクララ(株)様には様々な場面で、市の施策に対し、ご協力いただいており、大変有難く思っております。
今後とも、末永く、この中間市で操業していただけるようにサポート体制を整えるとともに、市といたしましても、地域に住む方々と企業をつなぐ「架け橋」として、よりよい関係を築いていければと思っております。
商工部企業立地課 立地計画係 原口
アクアクララ(株)様は、2012年に中間市に立地した企業です。アクアクララ(株)様が立地を決めた一つの要因として、中間市の企業誘致担当の熊谷係長の「誠実さ」や「熱意」が伝わったから、ということが挙げられるのではないかと思います。それは、立地後における地域密着型の企業と地元自治体の「頼り、頼られ」の良好な関係に繋がっているのではないでしょうか。インタビュー中の、アクアクララ(株)の担当者と中間市の熊谷係長とのやりとりの中こんな一幕がありました。
(熊谷係長)「私は、毎朝アクアクララの水を一杯飲んで、今日も頑張るぞ!って家を出るんですよ(笑)」
(アクアクララ)「熊谷さんが、アクアクララに入会してくれなかったら、中間市に立地していませんでしたよ(笑)」。
何気ない掛け合いなのですが、市と企業の関係性を示す縮図を垣間見たように感じました。
また、インタビュー中にも触れていますが、アクアクララ(株)の辰野常務の言葉で原口の胸にガツンと響いた、言葉がありました。辰野常務が従業員さんに口を酸っぱくしていっているという、「単に水の宅配だけで終わらないように・・・」の言葉です。
その言葉の真意は、「そこで生活している人の視点を大切にし、一人一人の幸福実感度を向上させる」という想いがあります。言い換えれば、「そこに暮らす、県民生活の「安心」・「安全」を支える企業であらねばならない」という決意ではないでしょうか。その想いは、「県民幸福度日本一」を目指し、県民生活の「安定」、「安全」、「安心」を向上させていく社会の構築に励むという、福岡県の想いにも繋がっているように思います。
アクアクララ(株)様の宅配飲料水業の急成長の裏には、実は、こういった想いの力が原動力になっているのかもしれない、としみじみ感じた原口でした。
校閲番号:九Ad140800139